森 鴎外との出会い

 柳田國男が森 鴎外の影響を強く受けていた事は、彼の対談等での発言から明らかである。
然し乍ら、柳田が鴎外と出会ったのは未だ彼が少年の頃であり、鴎外から得た知識は一度國男の頭の中で咀嚼され、他の知識と同様、柳田自身の意見となって出て来ているので、明確に指摘する事は難しい。
 レクラム文庫等、書物にコメントを書き込む習慣も鴎外の影響と思われるし、学問に対する基本的な姿勢或いは、オーソリティーに対する反発等も鴎外の影響らしきものが見える。
 鴎外の文学的作品は、暗記する位読んだ事は書かれているが、彼の学術的な論文については言及されていないので、詳しくは判らないが、「研究」という言葉、或いは「開化」と「文明」の対比に対する考え方等、鴎外を思い出させる発言が諸処に見られる。
仮令、柳田が鴎外の「洋学の盛衰を論ず」或いは「非日本食論は将にその根拠を失わんとす」を読んでいなくても、「黄禍論梗概」が無ければ、あれだけアナトール・フランスを読む事も無かったと思われる。

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